17. 余滴 『手向かうな』
「やられたら、やりかえせ」これが普通の人間の気持ちです。いっときテレビドラマで流行った「倍返し」というのも、やられた側の悔しさと怒りをよくあらわしている言葉でしょう。
「悪人に手向かうな」これを無抵抗を教える言葉と理解されることも多いです。確かに、暴力に襲われた時、抵抗するより無抵抗の方が、被害が少ないということは事実でしょう。しかし、イエスの言葉は無抵抗の勧めではないようです。
「右の頬を打たれたら、左の頬をむけなさい」 これは無抵抗でも、屈服の教えでもありません。むしろ、積極的な抵抗への勧めです。もちろん、力に対して力で報復するという抵抗ではありません。力に屈しないことによって「力そのもの」を無力化するという抵抗です。
「ちょと前、近所の公園で“おやじ狩り”におうたんけど、そん時に左の顔面どつかれて、『アホ ぼけ カス!』と言うたら、今度は右の顔面もどつかれて・・・。これって、イエスはんの言うとおりのこと、したことになるんやろか」(『聖書』コテコテの大阪弁訳)
大阪弁でいうと、「ビビらんで、ようやった!イエスはん、きっと大よろこびしたはる」と、なりますねん。
(マタイによる福音書5章38節)