「共生への道」
夏のこの暑さには参りましたが、ひとつだけよいことがありました。それは教会の庭に生息するやぶ蚊に刺されるのが少なかったことです。蚊も暑さで動きが鈍くなっているそうで、毎年やぶ蚊に刺され、かゆさと怒りで思い切り叩き潰していたのですが、今年の夏は蚊も命拾いをしたことでしょう。
「蚊は死にました 自分を死なせたものの 手のひらのうえに・・・ 一輪のまっ赤な花を残しておいて・・・ お返しします あなたの中に流れていたものを たしかにあなたへ・・・ と」
「ぞうさん ぞうさん」などの童謡で知られている、まど・みちおの詩です。この詩人は、なぜか「蚊」を題材にした詩をたくさん作っています。蚊が好きだったのか、それとも憎かったのか。
先日テレビで「蚊」をテーマに研究している天才少年のことが紹介されていました。いま、世界で一番多く人を死に至らしめているのは「蚊」による伝染病で、2番目が人間による殺人だそうです。その「蚊」をなんとか殺人鬼にしないために「蚊と共生」することが研究目的とのことでした。
「蚊」に腕を咬ませ、かゆみを耐えながら実験している少年の姿を見ていると、「血を分けた兄弟」のように見えてきました。「蚊」は撲滅するものと考えてきたこれまでの発想の転換が迫られました。そうなれば今後は「蚊」も人殺しにならなくて済むというわけです。
もっとも、「蚊と血を分けあう兄弟」への道はまだまだ途上にあるようです。それまではもう少し、蚊との生きるか死ぬかの壮絶な戦い(?)が続くことでしょう。