「比べる」
「人がみな、われよりえらく見ゆる日よ、花を買いきて 妻と親しむ」 石川啄木の歌です。啄木ならずとも、私たちはいつも他人と比べながら生きています。そのことで優越感を持ったり、劣等感に陥ったり、毎日この世の序列に一喜一憂しています。もっとも私なら「人がみな、われよりえらく見ゆる日よ、酒を買いきて、ひとり親しむ」となるでしょうが。
「天の国ではだれがいちばん偉いのですか」と弟子たちがイエスに問いかけます。「いちばん偉い」という言葉はメガ(大きい)の比較級で「より大きい」と言う意味です。天の国でも地上と同じように他人と比べて、上か下か、大きいか小さいか、という「比べっこ」があるのでしょうか。
イエスはひとりの子どもを呼び寄せ、彼らの中に立たせて「自分を低くして、この子どものようになる人が、天の国でいちばん偉いのだ」と言われました。少し意訳すれば「子どもの置かれている低さまで小さくなりなさい」ということです。この小さいという言葉はミクロスです。とても小さいという意味です。
より大きいこと(者)が、より小さいこと(者)を支配し、偉い者であるかのように見られている社会の中で、「いと小さい者」として生きることは、現実には敗北であったり、差別されることになります。
しかし、「偉くなりたい者は皆に仕える者になり、いちばん上になりたい者は、すべての者の僕となりなさい」(マルコ10:43)
これが天国の序列です。