46.下がる
「無礼者、下がれ!」と叱責されると、「ハッ、ハ―」と平伏し、ワル者は退散していきます。水戸黄門などの時代劇でよく見る光景です。
「サタンよ,下がれ!」ペトロに向かってイエスはこう言われました。その直前までペトロは「あなたはキリスト、生ける神の子です」と告白し、イエスから「あなたは幸いである」と褒められたばかりでした。「下がれ」とは、「後ろに回れ」という意味です。「わたしの前に出るな」ということです。ペトロはいつの間にかイエスより前に出てしまっていたのです。
「天の国のカギを与えよう」との言葉に有頂天になっていたのでしょうか。これからは自分が先導者(リーダー)であると思い上がっていたのでしょうか。リーダーはまず前を進むべきであると、彼はイエスの前に出て歩み始めたのです。
ペトロの先行は「人間の思い」によるものでした。「神の思い」に従うこと、それは「一番上になりたい者は、皆の僕になりなさい」(20:27)とのへりくだりの道だったからです。
受難節最後の日曜日になります。イエスは十字架に向かって最後の歩み続けられます。そのイエスのうしろ従っていくべきペトロは、最後の瞬間になって十字架の所から引き下がっていきました。十字架の上からイエスの哀しげな目がペトロの後ろ姿を追っていたのも知らないで。