16. 余滴 『負ける』
オリンピックがメダルラッシュで過熱したためか、同じ時期に甲子園で行われていた高校野球はあまり注目されなかったようです。熱戦の続く高校野球の最中に元西鉄で活躍した豊田泰光氏が亡くなったと新聞に出でいました。スポーツのあり方に対して厳しい見方を持ち、特に高校野球についてはそのプロ化を強く批判した人でした。
甲子園でも、地方大会でも優勝すると選手たちがマウンドに集まって右手の人差し指を高々と上げる習慣がいつのまにか行われています。「No.1」というサインなのでしょう。しかし見ていてあまり感じのよいものではありません。そこには戦って負けた選手への思いやりが感じられないからです。
オリンピックで銀メダルに終わった選手が「銀などいらない!」とはいて捨てるように言った言葉が残っています。スポーツは勝負の世界ですから勝ち負けは付きものです。しかし人生では勝つことばかりではありませんし、勝つ人ばかりでもありません。むしろ負けることから学ぶことの方が多いのです。「敗者復活戦」というのがあります。敗者にも可能性が残されているのです。キリスト教信仰は本来、敗者復活なのです。
(マタイによる福音書5章9節)